妊娠34週、1,843gで息子を出産しました。
突然の出産で、未熟児について何の知識も心構えもなく始まった子育て。
生後間もなく19日間を過ごしたNICUとGCUでは、先生方から、未熟児で生まれたことによる様々なリスクについて説明を受けました。
哺乳の力が弱いことや、免疫機能が弱いこと、黄疸が出やすいことなど。
その中で、特に困惑したのが、シナジスと、未熟児網膜症です。
シナジスは、「受けますか?」と決断を迫られましたが、正直、「何それ?」という状況。内容を理解できてからも、注射を受けるわが子を見るのは毎回辛かったです。
でも、今は、シナジスを受けられてよかったと心から思っています。
知らない医療用語に囲まれ、いろいろな決断を迫られた未熟児子育て。
同じような状況を経験された方の体験談に助けられたので、私も誰かのお役に立てたらと思い、実際に受けたケアとその感想をご紹介します。
目次
シナジス
シナジスって何?
風邪の原因となるウイルスの中で、乳幼児が特に重症化しやすいものの1つにRSウイルスがあります。
ほとんどの子供が2歳までに一度はかかるといわれているくらい、身近なウイルスです。(私は子供ができるまで知りませんでしたが)
大人がかかっても、軽い鼻かぜ程度のことが殆どですが、赤ちゃんがかかると高熱、鼻水、せきなどが出ます。重症化すると肺炎や気管支炎を起こします。
早く生まれてきた赤ちゃんは、母体から受け取った抗体が少なくて免疫が弱いうえ、呼吸器の機能も未熟なため、RSウイルスにかかると重症化しやすいといわれています。
その、RSウイルスの重症化を防ぐのがシナジスです。
体内でウイルスが増殖するのを防いでくれる薬で、ワクチンではありません。
効果は1カ月。
つまり、流行期(10月〜4月)は毎月注射しなければなりません。
体重1 kgあたり15 ㎎を太ももの筋肉内に注射します。
そのため、子供の成長とともに薬の量が増え、最初は1本ですが、大きくなってくると1回に2本(両足)への接種が必要になってきます。
先生から説明を受けたとき、「毎月筋肉注射⁉ 痛そう!かわいそう!」というのが最初の感想でした。
でも、 正直なところ受けないという選択肢は無さそうでしたし、肺炎になるのは怖いので、受けることにしました。
筋肉注射ということでドキドキしながら毎回通院しましたが、息子は注射の瞬間は泣くものの、予防接種の時と同様の反応で、特別痛がることはなかったです。
注射後はすぐにケロッとして帰宅していました。 副反応も特になかったです。
RSウイルスの脅威
実際に、息子はシナジスの接種が終了した3か月後、0歳11カ月の時にRSウイルスにかかりました。
保育園で流行っていたようで、もれなく貰ってきました。
39℃を超える高熱が出て、呼吸をするたびにするヒューヒューと苦しそうな音がします。即入院でしたが、RSウイルスに対する特効薬はないので対処療法。なかなか症状がよくならず、数日間は辛くてまともに眠ることもできず、泣き続けていました。
見ていて本当に辛かったです。
結局2週間入院しました。
細菌感染も合併していたので点滴で抗生剤を投与し続けました。
モクモクと薬の蒸気を吸う吸入も日に4回します。
辛そうだったのが、鼻の吸引。鼻からチューブを入れ、喉の奥の痰をとります。とても不快なようで、チューブを見る度毎回大暴れし泣き叫んでいました。これを1日4回、多い時は8回くらいやりました。
子供はもちろん、付き添いの親もへとへとになりました。
因みに、付き添った両親と祖母ももれなくRSウイルスを貰い、軽い鼻風邪になりました。
息子は2週間の入院ですっかり元気になりましたが、その後も風邪をひく度に気管支に軽い炎症が起きてしまい、呼吸が苦しそうな状態が続きました。
RSウイルスが気管支に相当なダメージを与えたようです。
「シナジスはこれを回避する薬だったのか!」と気づきました。
「あの時、打っておいてよかった!」と心底思いました。
シナジスの適応
未熟児だからといって、全員がシナジスが必要になるとは限りません。
2020年7月現在、シナジスは早産時に対して下記の適応があります。
出生時の妊娠週数が28週以下で、流行期間(秋から春)に12か月以下の乳児
出生時の妊娠週数が29〜35週で、流行期間(秋から春)に6か月以下の乳児
※早産以外にも適応になる疾患はあります。
対象になっている場合は、痛くてかわいそうではなく、苦しい肺炎を回避できる!と思って、打って貰うことをお勧めします。
なお、医療制度で助成されるので気づきにくいですが、シナジスは最低の50mgでも 7万6819円(2020年7月現在)と大変高価な薬です。
未熟児網膜症
未熟児網膜症って?
赤ちゃんの網膜は在胎36週頃に完成します。
臨月になるのが37週。本当にギリギリなのです。
それより早く生まれてきた場合は、網膜の血管が途中までしか伸びていない状態で生まれ、生後に成長することになります。
しかし、安定したお腹の中と違い、外界では網膜の血管が異常な方向に増殖してしまうことがあり、視力障害を引き起こしてしまうのです。重症な場合は失明に至ります。
在胎週数が少ない赤ちゃんほど発症しやすく、特に、肺が未熟なために生後保育器で酸素を大量に必要とした赤ちゃんはなりやすいそうです。
赤ちゃんの眼底検査
34週で生まれた息子は、検査の結果、網膜が完成しきっていないことがわかり、経過を観察するため、月に一度のペースで検査をしました。瞳孔を開く眼底検査です。
この眼底検査。大人でも瞳が全開の状態で光を当てて検査されるのは辛いですが、目的を理解できない赤ちゃんはもっと辛そうです。
まず目薬で瞳孔を開きます。その後、先生が網膜を直接見て診察します。
ただ、診察中、赤ちゃんには、「目を開いていてください」が通じないので、開瞼器というワイヤーでできた道具で無理やり開きます。
開瞼器を装着しているところを直接は見ていないのですが、瞼に強くついた跡を見る限り、正直、大人だったら耐えられない道具だと思います。
検査中に暴れないよう、網状の布で検査台の上にぐるぐる巻きに固定されます。
相当怖いと思います。意識のある状態で大人がこんなふうに検査されたら失神するのではないかと思います。
ママはおそらく検査を見ていられないだろうという配慮からか、検査中は廊下で待機します。息子は毎回病院のフロア中に響き渡る大声で泣き叫びます。この瞬間は毎回、未熟児に産んでしまって申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
泣きすぎて腫れた目と、開瞼器の痕跡は翌日まで治らないので、帰宅後も辛かったです。
結局息子は4回眼底検査をし、網膜が完成したのを見届けて、終了となりました。
辛いけれど、検査が重要
未熟児網膜症が発症しても、自然に治るケースもあるし、治療もあります。
治療はレーザーによる光凝固治療や、硝子体手術などです。
ただ、治療をするタイミングも重要なようなので、未熟児網膜症にできるだけ早く気付けるよう、先生に打診されたら臆せず検査されることをお勧めします。
目の異常があれば親が見てもわかるかなと思いましたが、正直なところ、素人目には全く判断ができませんでした。
特に新生児は、言葉に反応してくれるわけでもなく、異常が無くてもまだ物がはっきり見える状況ではありません。眩しいと目を閉じるので、光は感じ取っているんだなというのがわかるくらいです。
しっかりと専門医に診てもらうことが必要です。
まとめ
未熟児の子育て。
NICU/GCUでの治療をはじめ、未熟児には次々と試練が訪れます。
親になって間もない両親も、その都度、治療方針に関する様々な決断を迫られます。
私は初めて聞く医療用語ばかりで、同意をしたものの理解が追い付いていないことも多く、途方に暮れていました。
検査や治療の度に、息子が痛い思いをしなければならないことも、すごく辛かったです。
でも、振り返って思うことは、先生は、子供にとって最善の提案をしてくれていたんだということ。そして、充実した医療のおかげで小さな息子は救われたということです。
シナジスは、打っていなくて肺炎になっていたら大変だったし、未熟児網膜症はもし検査をせずに視覚障害に気付けなかったら、眼底検査で感じた辛さよりも大きな後悔していたと思います。
だから、少しでも先生の説明を理解して、親も前向きに治療や検査に臨むことが大切なのかなと感じます。
未熟児を産んでも、決して私のように悲観しないでください。
待ち構える治療や検査を、一つ一つ、前向きに、お子さんと一緒に乗り越えていただけたらと思います。